2023.4.30海を越えたラリーの結末!
その果てに生まれた
革新的「テニス」!!

テニス(TENIS)

テニスボールに着想を得て描き出された曲線美。背面・座面のバランスから脚のパイプチューブの輪郭に至るまで流れるような美しさで、圧倒的な存在感を放つラウンジソファ「テニス」は、スペインのデザインスタジオ「STONE DESIGNS」とのコラボレーションによって生まれました。
コロナ禍の影響でコミュニケーションの方法がオンラインに限られる中、海を越えたラリーを経て誕生した「テニス」にまつわるストーリーをご紹介します。

  • テニス(TENIS)
    テニス(TENIS)

    スペインの「STONE DESIGNS」と
    共同開発。
    海を越え、具現化へ
    のラリーが重ねられていく。

    これまでにない「情緒的な価値」をワークプレイスに生み出すため、世界的な規模で多様なプロダクトデザイン・インテリアデザインのプロジェクトを手がけ続けている「STONE DESIGNS」とのコラボレーションがスタートしました。

    テニス(TENIS)

    スペイン出身のクトゥ・マスエロス氏とエバ・プレーゴ氏が率いる「STONE DESIGNS」は、コカ・コーラ、ロレアル、レクサス、アディダス、 良品計画をはじめ、様々なグローバルカンパニーのプロジェクトに数多く携わり、世界的に高い評価を受け続けてきたデザインスタジオです。

    アダルの展示会への来場を通じて親交が深まり、A.T.I.Cvol.8コレクションの開発をきっかけにコラボレーションが実現しましたが、 コロナ禍の影響が強くなっていき、対面での打ち合わせや試作時の立ち会いなどは全くできない状況でした。

    コミュニケーションの方法がオンラインのみという中で、テニスボールから着想を得た斬新なデザインを、デザイナーの意図を汲みながらどのように具現化していくか。 まさに海を越えた“ラリー”が重ねられていきました。

  • テニス(TENIS)
    テニス(TENIS)

    異素材で完璧なラインを描く難しさ。
    通例は選ばず、
    見つけ出した突破口とは。

    テニスの流れるような美しいラインは、ソファ本体の木工部分と3次元に曲げたフレームのスチールパイプを組み合わせて描き出されています。木とスチールパイプの異素材が絡み合うため、非常に高度な技術が必要です。
    「主に木工を得意としている自社工場だけでは完結できないので、スチールパイプのフレーム部分は協力工場に依頼して製作しています。

    テニス(TENIS) テニス(TENIS)

    異素材ということに加え、それぞれ違う工場で製作しているため、最後に美しく融合させることが本当に難しかったです」と語るのは、テニスの開発をメインで担当した井川貴裕。 3次元の構造体の製作は非常に難易度が高く、木部とスチールパイプの寸法が2〜3mmでも狂えば、ソファ本体とフレームの間に不自然な隙間ができてしまいます。 そして、その誤差は張地を張る工程にも影響し、美しく仕上げることができません。また、後から部分的に調整しようと試みても、他の部分が干渉してしまい困難でした。

    「寸法通りに製作されているはずのスチールパイプと木部を合わせてみても、思うようにいかない。 本来であれば、接合部にパイピングと呼ばれる同じチューブ状の隙間埋め素材を使用することで解決もできるのですが、 それではデザイナーが思い描く軽やかで流線的なデザインが損なわれるのではないかと考え、パイピングは選択しませんでした」と振り返ります。

    テニス(TENIS)

    「STONE DESIGNS」、そして職人たちとやりとりしながら、木部を押し上げて調整することを決断。「図面上では表現できないような誤差、例えば座った際の荷重によるフレームのゆがみやブレなども考慮し、 自社のベテラン職人2名と相談を重ね、隙間埋め材を入れたり手で少しずつ木部を削ったりしてファーストモデルをつくり、量産できる体制も構築していきました。

    ファーストモデルがやっと完成したときは、職人チームだけでなく企画開発室や品質管理室など色々な部署から自然と人が集まってきて、 まるで我が子が生まれるシーンに皆で立ち合っているようで、すごく印象的でしたね」と微笑みながら語ります。

    テニス(TENIS)
  • テニス(TENIS)
    テニス(TENIS)

    開発の枠を超えたレベルアップ、
    「テニス」の先に見えた新しい景色。

    「STONE DESIGNS」との丁寧なコミュニケーションを通して想いや意図を汲みとりながら、自社だけでなく協力工場の職人たちとも試行錯誤を重ねて具現化された「テニス」。 そのデザイナーとクラフトマンシップのラリーには、これまでの井川の経験も活かされていました。

    テニス(TENIS)
    テニス(TENIS)

    「以前に勤めていた別の家具会社で海外工場を立ち上げた際、工場長としてマネジメントに携わる機会があり、職人の方々の想い・考えや気になるポイント、モチベート方法、 外部パートナーとのコミュニケーションの方法などについて理解を深めることができました。今回のプロジェクトでは、そのときの経験も役立てられたと感じています」

    これまでにない斬新なデザインの家具を具現化するため、オンラインでのコミュニケーションに限られた状況下でも海外のデザイナーと真摯に向き合い続けた姿勢が、プロダクトの完成だけでなく、 業務用家具メーカーとしての技術的な経験値の向上にもつながりました。

  • テニス(TENIS) テニス(TENIS)

    たとえ課題を簡単に解決できる方法があったとしても、情緒的な価値を守れないのならば選択しない。今あるものだけで考えようとせず、 通例にとらわれることなく積極的にチャレンジしていく。新しい発想との出会いと業務用家具メーカーとしてのレベルアップを繰り返しながら、また次の景色に向けて進んでいきます。

テニス(TENIS) テニス(TENIS)
クリエイティブ事業部 
企画開発室

井川 貴裕

日本で家具メーカーに就職後、単身でベトナム、タイでの現地採用として7年ほど働き、家具の企画開発から生産管理業務、 新工場立ち上げ等の経験を経て、2020年にアダルに入社。
現在は、企画開発室にて家具の商品開発、海外メーカーから仕入れ担当、及び海外生産協力工場でのOEM開発、 新規工場開拓など、主に海外メーカーとの業務を担当。

密かな楽しみは、海外出張に行く度に、新たなお店を見つけること。