2023.05.31ラフとタフの両立は超難題⁉︎
背中ベルトで愛され「ハング」

ハング(HANG)

背のクッションを本革ベルトで固定したユニークなデザインが映えるベンチ。
フッと肩の力が抜けるようなリラックスできる「ラフ」な佇まいが、ワークプレイスに情緒的な価値をもたらし、自由な発想や快適なリチャージを生み出します。
しかし、長く使い続けられる丈夫な業務用家具として機能するためには「タフ」であることが必要不可欠なので、その「ラフとタフの両立」に向け、製品化まで試行錯誤の連続でした。そこで今回は、そんな「ハング」誕生にまつわるストーリーをご紹介します。

  • ハング(HANG)
    ハング(HANG)
    ハング(HANG)

    リサーチでの“脱力感”がヒントに。
    背クッションをベルトで
    吊るすという発想。

    「ワークプレイスに情緒的な価値を」というA.T.I.Cvol.8のコンセプトをもとに、ベンチシートの開発が始まりました。「ベンチシートは様々な人が集うコワーキングスペースやリチャージスペースで利用されることが多いので、その空間に集まった人たちがカフェに訪れたような心地よさを感じられるものを開発したいと考えました」と語るのは、「ハング」の開発を担当した女性デザイナー。
    そのため、そこに置くだけでカフェの空気感を生み出せる個性を備えたデザインを目指し、まずは国内外のカフェのリサーチに取り組みました。

    そして、その膨大なリサーチ結果から浮かび上がってきた共通のエッセンスが、どこか肩の力が抜けた“ラフな脱力感”でした。オーソドックスなベンチシートではなく、とにかくラフな印象のデザイン。この大きな方向性に沿って考え、 考え、考え抜き、背中のクッションをベルトで吊るすという愛されデザインのアイデアへ至ったのです。

    そして、その膨大なリサーチ結果から浮かび上がってきた共通のエッセンスが、どこか肩の力が抜けた“ラフな脱力感”でした。オーソドックスなベンチシートではなく、とにかくラフな印象のデザイン。この大きな方向性に沿って考え、 考え、考え抜き、背中のクッションをベルトで吊るすという愛されデザインのアイデアへ至ったのです。

  • ハング(HANG)
    ハング(HANG)

    ラフとタフが成立しない難題の連続!
    強度を優先しながら、理想を貫く。

    背中のクッションをベルトで吊るすというアイデアにたどり着いてからは、ほぼ迷いなくデザインが決まり、明確なイメージが早々に固まりました。しかし、理想を鮮明に思い描いていた分、実際に検証してみたときとのギャップに苦しみ悩むこととなります。
    当初の構想では、クッションを巻き込んだベルトを無垢の板にぐるっと巻きつけ、その無垢の板を壁面に取り付ける予定でした。また、ベルトのバックルでクッションの高さを変えられるところも特徴でした。クッションを吊るしているだけで長さを変えられる自由な仕掛けが、カジュアルなラフさにもつながると考え、こだわったポイントだったのです。

    しかし、座ったときにバックルが背中に当たってしまう問題が発生し、当たらないように調整して高い位置からクッションを吊るすと全体のプロポーションが崩れることが判明。 さらに、吊るすだけではクッションがズレて浮いてしまい、美しい状態を保ちながらの使用が難しいという課題も見えてきました。 木のベンチに座クッションを置くラフなイメージの座面についても、コワーキングやリチャージを想定した座り心地には不十分でした。
    思い描いたとおりのラフな印象にこだわりすぎると、業務用家具として必要なタフな構造や快適な座り心地が保てない。そして、それでは意味がない。

    検証に検証を重ねた彼女は、ここで大きな決断をします。 クッションを実際に吊るすのではなく、吊るしているように見えるデザインへ変えることに決め、再び走り出しました。

    ハング(HANG)
    ハング(HANG) ハング(HANG)
    ハング(HANG)

    クッションをベルトで吊っているようなラフな印象に仕上げることはブレずに貫きながらも、業務用家具としての強度と使い心地を優先。 そこに存在しているだけで柔らかな癒しをもたらす「ハング」が、ずっと愛されて使い続けてもらえるように願いながら進めていきました。

    無垢の板を壁面に取り付ける方法はやめて、背パネルからベルトを吊るすデザインへ変更。 壁面工事が発生=設置しづらい、導入しづらいのではないかという懸念もあり、置き式のベンチシートに決まりました。 クッションはズレないように背パネルに固定し、座面はしっかりとした厚みが確保できる構造へ。 ただ、木ベンチにクッションを置いているような当初のラフなイメージを残すため、座面のクッション部分と土台部分をファブリックで張り分けて工夫しています。
    業務用家具としての強度と使い心地を優先しながらも、その中で力を尽くして工夫を重ね、できる限りのデザインポイントを実現させていきました。

  • ハング(HANG)
    ハング(HANG)
    ハング(HANG)
    ハング(HANG)

    幅広く対応できる寸法設計や
    ブランド内での組み合わせも追求して製品化

    ラフとタフの両立という最大の壁は乗り越えたものの、製品化に向けてさらに研ぎ澄ませていく必要がありました。
    ワークプレイスにおけるベンチシートのレイアウトは、壁面に沿った配置や背中合わせでの配置が一般的です。そして、そのような配置を考慮した上で、どのような寸法設定が適しているのか。ワークプレイスの多様なレイアウトに幅広く対応できるのか。あらゆる空間タイプやコーディネートを想定しながら、緻密な寸法設計を行っていきました。
    A.T.I.Cのブランド内での組み合わせやすさ、コーディネートしやすさも大切にしているため、同時期に開発を進めていたテーブルのサイズも参考にしています。

    ハング(HANG)

    さらに、同じA.T.I.Cの製品で、可愛らしく遊び心満載のスツール「パフート」との相性の良さを活かし、対面に設置しても違和感がないよう、「ハング」のベルトと「パフート」のハンドルに同じ革を採用。 張地も合わせられるように、どちらも二色張り推奨の製品へ。A.T.I.Cvol.8のカタログにも、実際に同じ革と同じ張地で撮影して掲載しています。

    このように、「パフート」をはじめ、同じA.T.I.Cの製品とコーディネートすることで、お気に入りのカフェ感覚で過ごせる空間を違和感なく簡単に創り出せるというところも、こだわったポイントです。
    また、緊急時の備蓄やオフィス用品の保管用にシート内部を加工するオプション、PC作業がしやすいようにコンセントを付けるオプションなど、 ワークプレイスに求められる要素もしっかりと丁寧に押さえながら製品として仕上げ、ついに完成しました。

    ハング(HANG)
  • ハング(HANG) ハング(HANG)

    貫くべきところと変えるべきところ。
    様々な壁の乗り越え方を発見できた日々。

    「ハングに関しては最初からデザインのイメージが明確だったので、実際の検証や試作で壁にぶつかる度、そのギャップにかなり悩んで試行錯誤しました。 どうすればクリアできるのか苦しむことが多かったですが、製造部の皆さんが一緒に悩んで向き合ってくれて、解決するためのアドバイスをたくさんくれたおかげで、なんとか乗り越えられました。 とても助けられましたし、ありがたかったです。また、他部署メンバーも検証会に参加してくれて、それぞれの視点から意見をもらえたことも大きかったですね」と振り返る。

    悩み迷ったときは開発当初の想いに立ち戻り、商品の価値を守るために貫くべきところと、どうにか工夫をして変えられるところを見極めていきました。
    「昨年2022年に開催されたオルガテックの展示会に出展した際、可愛い・座りやすい・提案したいといったお声を直接いただけて、とても嬉しかったです」と微笑みます。

    最初のデザインイメージのままスムーズに具現化できなかったからこそ、様々な壁の乗り越え方を発見でき、ワークプレイスに情緒的な価値をもたらす製品として研ぎ澄まされていった「ハング」。これからもラフにタフに、カフェ感覚で過ごせるお気に入りの空間を創り出していきます。

    ハング(HANG) ハング(HANG)
ハング(HANG) ハング(HANG)

展示会や学会のブースデザイン・設計を経て2019年に入社。
企画開発室にてA.T.I.Cvol.8の商品開発やカタログ業務に携わる。
2022年4月に本社プランニング室へ異動し現在は、カタログ発刊に向けたプロダクトマーケティング業務やADALの過去の特注品を元にコレクション化したBespoke Furniture Collectionの制作を担当する。

趣味は和菓子を眺めることと食べること。中でも練り切りと外郎が大好物。