2023.08.31異素材の連携!
木と金物2つの工場が紡ぎ出す、
日本のものづくり。

トーイ(TOOY)

天板にメラミン樹脂、脚にオークの無垢材、構造体にスチールを用いた「3素材ミックス」の斬新なデザインで、多様性あるワークプレイスに情緒的な価値と自由な発想をもたらす「トーイ」。異素材を組み合わせるため、木と金物2つの工場で連携する必要があり、具現化までの道のりには様々な壁が立ちはだかりました。
そこで今回は、2つの工場が連携して紡ぎ出す“日本のものづくり”に着目し、「トーイ」開発の物語をご紹介します。

  • トーイ(TOOY)
    トーイ(TOOY)

    異素材だからこそ生じるズレ。
    2mmの差で合わなくなるボルト位置

    昨今では、働き方や価値観・思考などの面で多様性あるワークプレイスが増加傾向にあります。そこで、そのような“ワークプレイスにおける多様性”を表現し、情緒的な価値をもたらすテーブルとして「トーイ」の開発が始まりました。
    トレンドシティとして独自スタイルを築くポートランドを中心としたアメリカ西海岸のクリエイティブ空間に着想を得て、天板にメラミン樹脂、脚にオークの無垢材、構造体にスチールを用いた「3素材ミックス」のデザインに到達。異素材を組み合わせるため、アダルの総合工場だけでなく、スチール部分は専門の外部工場に相談・依頼して連携していく必要がありました。

    トーイ(TOOY)

    「木材での精密な加工と金物での精密な加工を合わせるのは非常に難しく、どうするべきか悩む場面が多かったです」と語るのは、開発メイン担当の井川。ビス固定を選択すれば合わせやすいものの、天板の重量を考慮して耐久性を確保するため、調整が難しいボルト固定で進める必要がありました。「木材と金物という異なる素材なので、2〜3mmの差でボルト位置が合わなくなるんです。木脚を先につくり、そこからスチール部分の寸法を合わせていくのですが、図面だけでは分からない難しさがあることを痛感しました」とふり返ります。

    まず木部側の接合箇所を掘り、そこに金物が合うように調整していく工程。素材も工場も異なるため、ピタリと接合する位置・寸法精度にたどり着くまでには様々な課題がありましたが、それぞれの工場がそれぞれの素材やデザイン意図について理解しながら進めていくことで、「トーイ」ならではの回答に到達することができました。

    トーイ(TOOY)
    トーイ(TOOY)
    トーイ(TOOY)

    CNCを駆使し、脚の形状を模索。
    「トーイ」を成立させる“削ぎ”

    2つの工場の連携による異素材の組み合わせとともに、木脚の見え方についても試行錯誤を重ねました。

    「トーイ」の木脚は絶妙な“削ぎ”が特徴で、その削ぎ面の形状によって全体デザインのバランスが大きく変わります。そのため、削ぎ面の形状にも徹底してこだわり、4タイプを検討。「トーイ」のデザインとして調和のとれた“削ぎ”を導き出しました。
    総合工場に導入された「多軸CNC加工機械(刃物が3次元に移動し、曲面や立体的な木材の削り出しが効率的にできる機械)」を駆使し、熟練の職人が手仕事で仕上げるレベルの緻密さを実現しています。

    トーイ(TOOY)
    トーイ(TOOY)

    開発担当として、
    2つの工場とやりとり。
    現場の理解度や提案内容に“日本のものづくり”を体感。

    アダル入社前は、海外の工場で7年間ほど管理者として家具製作に携わっていた井川。彼にとっては、国内の工場とやりとりをする初めてのプロジェクトでした。

    トーイ(TOOY)

    「アダルとしては、ずっと前からお付き合いさせていただいている鉄工所様との連携でしたが、私自身は初めてのことで、日本のものづくりのレベルの高さに驚きました。こちらから依頼した段階で、組み立て時に木材が動くことまで想定した提案をいただくなど、本当にたくさん支えていただきました」と語ります。

    それぞれの工場の精度が高いだけでなく、木脚担当が金物について深く理解し、金物担当が木材について深く理解しているところも、プロジェクト成功の大きなポイントでした。

    「工場の方々が企画意図を汲んでくださり、様々な方法を提案いただけたことが非常にありがたかったです。そして、それと同時に、自分自身がしっかりと理解しておかなければ追いつけないということも痛感しました。すごくレベルの高いものづくりを経験させていただき、もっともっと成長していかなければと強く思うきっかけになりました」と熱くふり返りながら、次のステージを見据えます。

    多様性のあるワークプレイスに情緒的な価値をもたらす「3素材ミックス」の斬新なデザイン。木材と金物それぞれの工場が高いレベルで理解し合い連携することで具現化に至りました。これからも試行錯誤を重ね、ワークプレイスの可能性を広げて価値を高める“ATICならではのものづくり”を展開していきます。

クリエイティブ事業部 企画開発室 井川 貴裕 クリエイティブ事業部 企画開発室 井川 貴裕
クリエイティブ事業部 企画開発室

井川 貴裕

日本で家具メーカーに就職後、単身でベトナム、タイでの現地採用として7年ほど働き、家具の企画開発から生産管理業務、新工場立ち上げ等の経験を経て、2020年にアダルに入社。
現在は、企画開発室にて家具の商品開発、海外メーカーから仕入れ担当、及び海外生産協力工場でのOEM開発、新規工場開拓など、主に海外メーカーとの業務を担当。

密かな楽しみは、海外出張に行く度に、新たなお店を見つけること。