飲食店やオフィスなどに設置される家具は、不特定多数の人々が様々な使い方で利用するので、いつのまにか傷や凹みができてしまっているということも少なくありません。また、清掃や家具の移動時に、ぶつけてしまったり倒してしまったりして傷がつく場合もあります。
そのように日常的に起こりやすいからこそ、ちょっとした傷や凹みであれば費用をかけずに自分で修理したいという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、ホームセンターで簡単に手に入る道具を使い、DIYで簡単にできるセルフリペアの方法をご紹介します。業務用家具はもちろん、お家の家具にもお使いいただける方法です!家具に愛着を持ちながら長く使っていただけるよう、傷の種類別にコツや注意点などもご紹介します。
目次
1. 揃えておきたい道具
① 補修クレヨンセット
傷を埋めるために使用します。今回は、「かくれん棒」 という商品を使用しました。木目の色は1色ではないので、複数の色を合わせて使う方がおすすめで、カラーバリエーションが揃ったセットを選びましょう。
細い傷の場合はマーカー、太い傷であればクレヨンタイプというように使い分けると、より馴染みやすく目立たなくできる可能性が高まります。
②ヘラ
今回は補修クレヨンとセットになっているものを使用しました。
③ 補修マーカー
今回は「住まいのマニキュア」というもののなかから、補修する家具の木目に近い色を使用しました。
④ ライター
⑤ 金属製のスプーン
⑥布
2.傷の種類別、補修の手順
木製家具にできやすい傷の種類は主に3つ
補修難易度 | 傷の種類 | 補修にかかる時間 |
---|---|---|
レベル1 | 引っかき傷 | 約7分 |
レベル2 | 打痕(だこん) | 約15分 |
レベル3 | 欠け(えぐれた傷) | 約10分 |
※所要時間は傷や家具の状態によっても変動します
全パターンに対応!家具修復の手順
基本的に下記の手順を押さえておけば、引っかき傷、打痕、欠けなどの主な傷すべてに対応できます。今回は、「打痕」を例に詳しく手順をご紹介していきます。
補修前の傷の状態がこちら。
1.補修クレヨンを選ぶ
2.選んだクレヨンをスプーンなどの上に乗せ、ライターで溶かしながら調色する
3.傷のない箇所と同じ高さになるまで、調色したクレヨンを傷に埋めていく
4. 付属のヘラで平らにならす
5. 平らになったら、余分に付いている部分を布で拭き取る
6. ペンで木目を描く
7.補修完了!
ホームセンターで手軽に買える道具のみで、打痕特有の木部の凹みも埋まり、フラットになっています。色味は傷の部分だけ少し異なるのは分かりますが、遠くから見たら気にならない程度です。
3.傷の種類別、補修のコツ
【引っかき傷】思いきって一定量のクレヨンを流し込む
引っかき傷の場合は傷が浅いものが多いので、1回で一定の量の補修クレヨンを流し込み、ヘラでのばすとスピーディーに埋められてスムーズです。引っかき傷は、丁寧に補修すれば傷はかなり目立たなくなります。
下の写真はひっかき傷をセルフリペアした様子です。かなり近づいてみてもほとんど分からない程度まで補修することができました。
【打痕】補修クレヨンは広めに&盛り気味に
打痕は見た目で分かる凹みに加え、その周辺から徐々に凹んでいることが多いです。そこで、補修材を広めにかつ盛り気味で乗せていくと綺麗に傷が埋まりやすいです。
【欠け(えぐれた傷)】木の繊維や盛り上がりの処理を
欠けの補修は、大体の場合において木の繊維が出てきたり、盛り上がりがあったりします。そのため、まずはそこを処理してから埋めていくのが、美しく仕上げるコツです。
上手に補修するポイント3つ
・補修の範囲をできるだけコンパクトにすること!
・ 完璧な修復を求めない!ときには妥協も大切な選択
・とにかく慌てない!丁寧な作業が成功への近道
4.【注意】セルフリペアで気を付けたいこと3点
色が合わない場合、補修箇所が逆に目立つ
早く終わらせようとしないこと。最初から色を完璧に合わせようとして濃い色をのせてしまい、周りの色と補修箇所の違いが逆に目立ってしまうことがあります。また、傷の輪郭や補修箇所の艶が目立ってしまう可能性もあるところも注意点です。
耐久性が低い(傷が悪化する可能性もあり)
補修が完了したと思っても実際には埋める量が足りていない、補修した部分が取れてしまうなどは、家具のセルフリペアで起きやすいことです。自分で家具の修復を試みる場合は、耐久性の低さや服などへの色移りのしやすさを念頭に行いましょう。
道具の耐用年数に注意!
セルフリペアに使える道具はホームセンターなどで簡単に購入できますが、道具には耐用年数がある為、揃えたものの1〜2回しか使わず捨てることになる可能性もあります。
そのため、セルフリペアの際は、すべての家具の状態をチェックし、1箇所だけでなく全箇所まとめて補修することをおすすめします。
5.セルフリペアが難しい場合は、修復のプロに依頼を!
費用を抑えながら手軽にできるセルフリペアですが、やはり大切な家具を完璧に修復したいという場合は、家具リペア専門のプロに依頼するのがおすすめです。
そこで、どういったケースがプロに依頼するべきなのか、見極めポイントをご紹介します。
プロに依頼することをおすすめする場合
下記のような傷の場合、専門的な道具が必要なケースも多いため、プロに依頼した方が見栄えも耐久性も安心です。
・傷が深い、大きい
・シミや色褪せで補修範囲が広い
・木部以外の部分の傷
・天然素材の家具
日数の心配要らず!大きい傷でも1日で修復(※1)
「プロに依頼すると日数がかかるのでは?」「何日間もイスやテーブルが不足している状態が続くのは困る・・・」と懸念される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際には、小さな傷なら3時間程度、大きな傷でも1日程度で修復できることが多いです。(※2)プロに依頼すべきチェック項目に該当する場合は、一度ご相談されることをおすすめします。
※1) 数量によっては日数がかかる可能性もあります
※2)実動計算。家具の状態や数量によっては日数がかかる可能性もあります
【プロによる】打痕の修復例
では、プロに補修依頼する場合、仕上がりはどこまで元通りになるのでしょうか?
「打痕」の修復を例に、プロの技をご紹介します。
こちらはプロの道具一式です。プロ仕様の道具によって、耐久性を保ちながら、どこに傷があったかほぼわからない状態まで補修することができます。
① セルローズシンナーまたはペイントシンナー
希釈で使用するほか、ブラシや補修で使った道具などの洗浄に使用する溶剤
②リキッドサンドペーパー
補修前の下地のクリーニング、余分な補修材や塗料を取り除く溶剤
③アクリルスプレー
艶調整するためのもの、スプレーには種類があるのでその場に合ったものを使用する
④リムーバープラス
塗料吹き付け時に発生するスプレーミストのぼかし剤として使用
⑤ペイントボックス(着色用)
⑥フィラーアプリケーター
補修剤を埋めた後平らにするための道具
⑦ハードワックス(補修材)
⑧電子温調こて
補修材を溶かして埋めるためのもの
⑨ウエス(布)
1.傷の周りを削って平らにする
2.電子温調こてで補修材を溶かし、木部に合うワックスで傷を埋める
3.ワックスを平らに削る
4.余分なワックスを布(ウエス)で拭き取る
5.色を調合し、ワックスの上から筆で木目を描いていく
6.専用スプレーで、木部に合う艶具合を調整する
補修前と補修後の打痕傷の様子です。見る角度を変えたり近くで見たりしても、どこに傷があったのか分からないレベルで補修されています。
セルフリペアの場合と比較してみます。ホームセンターの道具でも単体で見た時は十分補修できているように見えましたが、比べてみると違いを感じます。
6.終わりに
セルフリペアとプロに依頼する場合を使い分けよう
不特定多数の人々が利用する場所に設置された家具に傷がついてしまうことは避けがたいため、ちょっとした「引っかき傷・打痕・欠け」であれば、セルフリペア用の優れた道具をホームセンターやネット通販などで気軽に揃えてご自身で修復にチャレンジしてみるのも一つの手です。
ただし、セルフリペアはあくまで一時的な傷の目隠しのようなものなので、大切な家具を完璧に修復したい、修復箇所が全く分からないようにしたいという場合は、やはりリペアのプロへの依頼をおすすめします。
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