今回の張り替えを担当したのは、数十年にわたってアダルの家具づくりを支え続ける技術者・中山節男。「張り替えは原型を崩さないことが第一。直線は直線のまま、曲線は曲線のまま。そうすることで、本当に美しい張り替えができる」と語る。

学生時代にインテリアについて学んだことがきっかけで、卒業後は家具づくりの世界へ飛び込んだ。その後、様々な経験を重ね、仕事内容の幅をより広げたいという想いでアダルへ入社。多種多様な業務用家具づくりに携わり、腕を磨いた。熟練の技術者となった現在でも、常に心がけているのは「基本を守る」こと。張り替えを担当するときも、「基本を守ることがお客様からのオーダーを守ること」につながると考え、目の前の家具と真摯に向き合う。

張り替えの工程の中で最も難しく、仕上がりを決めるとされる「型どり」の正確性・レベルの高さも、きっとこの姿勢から生まれているのだろう。家具本来の原型に沿った本当の美しさを追求し続ける日々。「毎日がとても新鮮。この手が、体が動く限り、今の仕事を続けていきたい」と微笑む中山。家具との対話はこれからも続く。


設置目的に適した張り替えで家具の「新たな生き方」が始まる。

張り替え」と聞くと、古くなった家具を新品のように蘇らせるというイメージが強いかもしれない。しかし、今回のように別の意味をもつ「張り替え」もある。

それは、設置目的・利用目的に最も適したスタイルへの張り替えだ。張り替え後のソファは、広々として高級感のあるホテルライクなリビングへ設置されることになっていたので、その空間に調和し、訪れたゲストの方々にも落ち着きをもたらす、モダンな印象の張地を選定。また、お子さまがいらっしゃるご家庭だからこそ、食べ物や飲み物がこぼれたとしてもメンテナンスしやすい合皮レザーにこだわった。こうして、このソファはまた新たな空間で新たな道を歩み始める。家族がゆったりくつろぐ時間や、大人たちが楽しく語り合う時間に、なくてはならない存在になる。家具の張り替えは、「家具としての生き方」の張り替え。これからもオーナーの人生に寄り添い、ともにずっと生きていく。