コラム

COLUMN

アダルの快適研究所 <HINATA大島>

宮崎県の離島、大島に開業するラグジュアリーヴィラ「HINATA大島」。
最高級の余白を堪能できる宿泊体験を支えるのは、アダルの家具たちです。今回は、HINATA大島の責任者である、株式会社レジャークリエイトホールディングス社長の河野さんと、設計・施工を担当した猪股さん、アダル担当プランナーの末冨さんに、「私たちが考える快適」について話を伺いました。

アダルの快適研究所、スタートです!

快適は、お客様によって違う

ーーHINATA大島は、どのくらい前から始まったプロジェクトなんでしょう?

河野:スタートは3年前ですね。平地の、背の高い雑草が生い茂っているところから始まりました。今の景色からは考えられないくらい、ザ・無人島!って感じで。

猪股:アダルさんに入ってもらったのは、半年ほど前からですかね。

末冨:そうですね、猪股先生のご紹介で、昨年の10月に初めて現地を訪れました。

ーーいきなりですが、アダルにお願いすることになった決め手は何なんでしょう? というのも、色んな会社さんがある中で、どういう判断でどういう要素が決め手になったのかは、決める側も決められる側も、特徴や性格が出るのかなと。

河野:元々、猪股さんとも相談して、コンペ形式にさせていただいたんです。私たちとしても社運を懸けた大きなプロジェクトで、失敗も後悔もしたくないという思いはありましたから。決め手になったのは、「私たちの思いや考えを、最も汲み取ってくれそうだな」と感じたところですね。コンペに参加いただいた会社さんは、もちろん皆さん、良い提案をしてくださったんです。相性や予算や方向性など、細かなところはありますが、ある意味ではそこって、後から調整できる部分だったりもします。だから良い悪いではなく、皆さん良い提案をしてくださる中で、アダルさんに感じた「汲み取ってくれそうだな」という姿勢や経験が、私たちの中で大きかった。

猪股:そうですね。もちろん皆さんそれぞれ個性ある素晴らしい提案をしてくれましたが、提案内容以上に、そうした姿勢を強く感じましたね。

末冨:嬉しいです。何度も船に乗って、現地に足を運んだ甲斐があります(笑)

日本初のコンクリート製灯台を有し、亜熱帯植物が自生するほどの大自然が魅力の大島。

河野:プレゼンで、そういったところを強く感じたんですよね。もちろん、打ち合わせを重ねるにつれて、最初の方向性から変わったところもあるんですよ。宮崎にない宿を作りたい、洗練されたイメージも欲しければ、ラグジュアリーさも担保したい。でも、パースはあると言えど、まだ内外装も出来上がっていない中で、空中のやりとりでちゃんと言葉にして伝えるのって難しい。そんな私たちの悩みや迷い、まだ言葉にできていないことを汲み取ってくれそうだなと、最初のプレゼンを通して思ったのが大きいです。

猪股:ただ、場所に合う家具だけを選んでくれって話じゃないですから。レジャークリエイトさんの考えもあるし、設計を手掛け実際に施工をする私の考えもある。難しいのは、それらをきちんと擦り合わせていくことですよね。「お願いします」「できました」の間にあるやりとりが大切と言いますか。

末冨:私たちアダルの理念は「快適な生活空間のアドバイザー」なんです。ただ、「快適」という言葉はかなり抽象度が高いし、細かなテクニックはあっても明確な方程式があるわけじゃない。何より「お客様の考える快適」は、お客様によって違うし、変化するもの。だから、ヒアリングにも時間をかけますし、汲み取ろうとする姿勢は社風として根付いているものだと思います。

毎回のプレゼンでは、提案書を両面印刷・中綴じ仕様にすることで、見開きで情報をダイナミックに伝え、全体像を描きやすくする工夫が。

快適は、快適なコミュニケーションから生まれる

ーーじゃあ、今回はHINATA大島がどのような快適をイメージしていて、それをどう具現化したのかがポイントになってくるわけですね。

猪股:全体としては「余白」がコンセプトですね。余白に浸ることで、心と時間に余裕を取り戻してもらえるような体験を意識しています。

河野:専用ヘリコプターで島に降り立つような非日常体験や乗馬などのコンテンツ、宿泊棟に備え付けたサウナ、静寂に満ちた広大なロケーション。他にも、日本では珍しい蝶や自然が生息していたり、ここでしか味わえない時間と体験をどう作るかが鍵でした。

末冨:家具のイメージも、最初は「和モダン」というざっくりとした指定でしたが、打ち合わせを重ねるにつれて変わっていきましたよね。

絶景と共にお客様を出迎える受付棟
受付棟 ライブラリー
受付棟 バーカウンター

河野:そうですね。「景に寄り添う」という、家具選定におけるコンセプトを出していただいたのが大きかった。それまではトーンやイメージでしか比較できませんでしたが、コンセプトという旗が出来たおかげで、私たちも大切にしたい考えがより深まって。

末冨:河野社長がおっしゃるように、ここでしか流れない時間や体験を重視したいと考えたときに、家具が主張しすぎない、自然の景観を崩さないことが、快適をつくるポイントだと感じたんです。形状や素材が空間を邪魔しない、でもきちんと調和がとれて、見劣りしないハイエンドなもの。家具の機能だけでなく、「情緒的価値」をいかに空間にマッチさせるか。そういった提案ができたのも、河野社長がアダルを受け入れて信頼してくださったのが大きいですね。コミュニケーションの中で、もうちょっと好き勝手にというか、踏み込んで提案してみようと思えましたから。

海を眺めながら食事ができるレストラン
個室でも食事と景色を楽しめる
背もたれのカーブが美しい<ミコ>

ーーHINATA大島のプロジェクト過程が発信されているYoutubeでも、社長がすごくフランクに、でも悩みや思いをきちんと伝えながら打ち合わせをされている様子が、とても印象的でした。

河野:お客様の快適を考える上で、私たちが窮屈に打ち合わせしたら本末転倒ですし。きちんと抑えるところは抑えて、でも信頼して悩みや迷い、要望をお伝えする。会社でもそうですし、社員や私たちがのびのびと力を発揮できた方が、必ずいいものができると信じています。

家具を通して「物語」を描く

河野:アダルさんで良かったなと思ったのは、コンセプトも含めて、家具を通して「物語」を描いてくれたこと。ただ単に「こっちの素材の方が合います」とかじゃなくって、「受付棟には伝統工芸品や木のオブジェがあるから、い草を使った製品や陶器などを合わせると、素材やテクスチャを通して物語が生まれます」という提案をしてくださったんです。

猪股:特に宿泊棟の家具については、素晴らしいアイデアでしたね。ほら、方向によってカラーリングを変えたアレです。

末冨:宿泊棟は全部で7棟あるんですが、同じ家具でもどうにか違いを出せないかと考えて。そこで、棟ごとの立地の方角に着目しました。「二十四方」と呼ばれる、360度を24分割した方位に、日本の「二十四節気」という暦を対応させたんです。「小寒」「立春」など、棟の立地ごとに設定された二十四節気のイメージに合わせて、ソファの張り地の色などを変えて。家具が同じでも、棟ごとの個性を表現することができました。

風水にも適用される「二十四方」に、日本の暦「二十四節気」を対応させたアイデア。暦に合わせたカラーリングを適応させ、同じ造りと家具でも個性を表現。
宿泊棟 B-5「小寒」
宿泊棟 A-2「霜降」

ーーそれ、いま耳で聞いているだけでも面白いアイデアですね。

末冨:素材の組み合わせとテクスチャの相性は、かなり考えましたね。棟ごとに塗り壁の色も違っているので、その棟でしか出来ない体験もしていただけると思います。ソファの座高も少し低いものを採用していて、従来のものより目線が低くなることで、茶室のような日本らしさも演出できるし、圧迫感も少なくなったり。

河野:そうした「物語」って、こちらも納得できるし、憶えやすいんです。憶えやすいと、お客様にも説明しやすいし、感動してもらえるこだわりになります。物語ーーナラティブを作っていただいたのが、本当に素晴らしかった。宿泊棟のソファは特注で製作してもらって、試作で座り心地も確認させてもらえたり。

末冨:わざわざショールームまで足を運んでくださって、工場も見学してくださり。レジャークリエイトさんのそこまでこだわる姿勢に引っ張られて、私たちも火が付きましたね。

木目の美しいテーブルと「い草」を使ったソファの組合せなど、素材・テクスチャと景観との調和が快適な空間を実現
宿泊棟の一部のソファの張地には、アクアクリーン加工を施したものを採用。水でサッと拭くだけで汚れが取れ、メンテナンスも快適に。

河野:現地に何度も足を運んで、色合わせや向きなども確認してね。本当に、物語だらけなんです、この場所は。2015年に最後の住民が離れ、無人島になったこと。それなのに週に一度、島に通って、重要文化財である灯台の点検や植樹といった環境を整備してくださっている人がいること。地主さんとの縁や、私たちを受け入れてくださったこと。設計の猪股さんやアダルさん、工事関係者の皆さんもそうです。そんな文脈と物語を、私たちが引き継いで、新たな物語をここから作っていければと思います。

末冨:家具も納品して終わりじゃなく、お客様に使っていただいてからが始まり、みたいなところもあるので。これからここで始まる物語を、私たちの家具が時間と共に愛されるものになってくれたら嬉しいです。


HINATA大島(2026年9月1日グランドオープン予定)
〒889-3204 宮崎県日南市南郷町中村乙8004-3

設計:有限会社猪股浩介建築設計
担当:野口晃裕(本社営業部)、末冨秀果(クリエイティブ事業部)
納入製品:和佳・ジオグリフ・ミコチェア・特注ソファ・葉月 他

写真:山口亜希子
取材:白川烈

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