コロナ禍において、ご家庭・飲食店・オフィスなどの家具をアルコールなど強力な消毒液で消毒することがスタンダードになってきましたが、家具の表面仕上げが変色したり、劣化したりというトラブルも出てきているようです。一度変色や劣化を起こすと修復することが難しい為注意が必要です。

家具のお手入れには基本的に中性洗剤が推奨されていますが、「より強力な消毒液で消毒したい」というニーズは多いと思います。
そこで、今回は当社の家具で使用している主な素材メーカーの見解を基に、各素材・塗装別の消毒耐性についてまとめました。

目次

  1. コロナ禍で多用される3つの消毒方法
  2. 素材・塗装別の消毒耐性
  3. まとめ
  4. 最後に

コロナ禍で多用される3つの消毒方法

中性洗剤の他に、コロナ禍において一般的になった消毒方法は3種類あります。

A.アルコール(エタノール)
B.次亜塩素酸水
C.次亜塩素酸ナトリウム液

左からアルコール、次亜塩素酸水、 次亜塩素酸ナトリウム液 、中性洗剤の代表例

アルコールの中でもエタノールとよく混同されるメタノールは人体に有害な物質の為注意が必要です。 また、「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム液」は名前が似ていますが、物性が全く異なりますので混同しないように注意して下さい。
厚生労働省によると、 ハイターなどの塩素系漂白剤が代表的な「次亜塩素酸ナトリウム液」は、アルカリ性で酸化作用を持ちつつ、原液で長期保存ができます。一方「次亜塩素酸水」は、酸性で「次亜塩素酸ナトリウム液」と比べて不安定であり、短時間で酸化させる効果がある反面、保存状態次第では時間と共に急速に効果が無くなります。

素材・塗装別の消毒耐性

当社で家具に使われている6種類の素材・塗料をさらに15種類に分類し、 <A.アルコール消毒> <B.次亜塩素酸水> <C.次亜塩素酸ナトリウム液> で消毒を行った場合の耐性を表でまとめました。

それぞれの耐性について、1つずつ詳しくご説明していきたいと思います。
(当社が推奨する消毒法を先にご覧になりたい方は まとめをご覧ください)

木部塗装

テーブルや椅子など木部の塗装は大きく分けて、①ウレタン塗装 ②ラッカー塗装 ③水性塗料 ④オイルフィニッシュの4種類が一般的です。

① ウレタン塗装 

いずれもすぐに症状が発生することは少ないようですが、消毒液の濃度、頻度、拭き取り時の圧力によっては、塗膜の融解、軟化等の症状が発生する恐れがあります。

② ラッカー塗装

早期段階で、塗膜の融解・軟化等の症状が発生するので注意が必要です。

③ 水性塗料

消毒耐性についてはウレタン塗料と同様ですが、塗膜の劣化進行速度はウレタン塗装よりも早期に症状が出てきます。

④ オイルフィニッシュ

塗膜を形成する塗装ではないため、見た目の影響はそれほどないようですが、自然塗料特有の、浸透保護層を徐々に消失させ、塗装としての耐久性は劣化していくようです。

表面仕上材

テーブル天板・什器など「箱モノ家具」と呼ばれるもの等に使われる表面仕上げ材の主な素材は、①メラミン化粧板 ②ポリ合板の2種類があります。

① メラミン化粧板

<A.アルコール消毒> に対する耐性は強いようですが、 <B.次亜塩素酸水> 、 <C.次亜塩素酸ナトリウム液> については、0.02~0.05%程度に希釈し、最後に充分な水拭きが必要です。

② ポリ合板

3種類の消毒について、今のところ大きな異状の報告は無いようです。

イス張地

業務用家具で多く用いられる素材は① ファブリック ② PVC、PUレザー の2種類です。

① ファブリック

ファブリックはポリエステル、綿、レーヨン、ウールなど様々な素材がありますが、すべて、収縮、溶解、劣化、色抜け等の症状が発生する可能性があります。3種類の消毒によるメンテナンスは推奨しません。

② PVC、PUレザー

PVC、PUレザーとは、「合皮」や「ビニールレザー」と呼ばれるものです。メーカーの張地見本帳に、耐アルコールと記載されているものは<A.アルコール消毒>が可能です。
また「耐次亜塩素酸」という記載されているものは、<C.次亜塩素酸ナトリウム液>に対する耐性を指しており、物性が全く異なる<B.次亜塩素酸水>に対する耐性ではありませんので注意してください。

金属

一般的に家具に用いられる金属は①スチール ②アルミニウム ③ステンレス の3種類です。

① スチール 

スチールを用いた家具に対する一般的な塗装方法である、粉体塗装、メラミン焼付塗装に関して、 <A.アルコール消毒> <B.次亜塩素酸水> <C.次亜塩素酸ナトリウム液>、いずれも推奨はしておりません。どうしても消毒が必要な場合は、スプレーもしくは拭き掃除後に、しっかりと乾拭きをするか、水拭きすることが必要です。

② アルミニウム

<A.アルコール消毒>に長時間漬けた場合腐食が見られるようです。スプレーで消毒程度だとさほど問題はなさそうですが、空拭きの併用が必要です。<B.次亜塩素酸水>を使用すると白色の斑点が発生します。
<C.次亜塩素酸ナトリウム液>塩素ガスを発生して腐食します。

③ ステンレス

<A.アルコール消毒>に対する耐性はありますが、<C.次亜塩素酸ナトリウム液>については、濃度に注意する必要があります。 市販されている次亜塩素酸ナトリウム水は約5%程の濃度が一般的ですが、そのまま使用すると錆が発生します。0.05%程度に希釈して使用する必要があります。

樹脂

① ポリプロピレン ポリエチレン

<A.アルコール消毒>に対する耐性があります。<B.次亜塩素酸水><C.次亜塩素酸ナトリウム液>に対しても耐性あるようですが、スプレーもしくは拭き掃除後に、しっかりと乾拭きをするか、水拭きすることが必要です。

② アクリル

<A.アルコール消毒>で白化します。絶対に避けて下さい。<B.次亜塩素酸水><C.次亜塩素酸ナトリウム液>に対しても耐性あるようですが、スプレーもしくは拭き掃除後に、しっかりと乾拭きをするか、水拭きすることが必要です。

い草

い草自体の収縮、溶解、劣化等は起こりにくいと考えられますが、染料が退色する恐れがあり、特に濃い色の退色が目立つと思われます。また、い草の”ヘリ”は有機顔料による色付けのため、著しく退色等の症状が発生する恐れがある為、注意が必要です。


まとめ

各素材について、消毒耐性をご説明してきましたが、「テーブルの天板は消毒OKだけど、脚部はアルミなのでNG」というのは、店舗や施設の運営上あまり現実的ではありません。

独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)によると市販の家庭用洗剤の主成分でもある「界面活性剤」も一部有効であると報告されています。 (※新型コロナウィルスを対象にした検証の為、ノロウイルスなど、他の病原体への効果は検証されていません。)

「有効な界面活性剤を含有するものとして事業者から申告された製品リスト」より具体的な商品名がご確認頂けます。 この中でも「中性」の家具用洗剤をお選び頂くと安心してご使用頂けます。

特に木部塗装の種類は専門的知識がない場合は見分けることが難しい為、いずれにしても「中性洗剤」のご使用を推奨します。

最後に

今回の記事は、あくまでも皆さまに、コロナ禍における家具の消毒方法について、正しい知識を持って頂くことが目的であり、品質を保証するものではありません。
当社の品質保証としては、取扱説明書・保証書に記載されているように、中性洗剤によるメンテナンスが適用条件となりますので、ご了承下さい。