片手鍋を使った独自製法でたてる唯一無二の一杯。
蒸らしは砂時計できっちり3分間、最も美しく飲める温度を見越し少しだけ高い温度でテーブルへ。

「一番美味しい温度ですか?昔は測っていましたが、今はもう感覚ですねぇ」と優しく微笑むのは、珈琲の店「ばんぢろ」の2代目マスター・中野成俊さん。

先代が博多の本店で修業し、暖簾分けで開いた久留米店。
中野さんはその先代のもとで修業を重ね、2014年頃に店を引き継いだ。
上質な酸味とコクで、昭和天皇への献上コーヒーとしても知られる本店の味を守り継ぎ、創業59年(2020年現在)。
ハヤシライスや厚切りピザトーストなど、中野さんお手製メニューのファンも多い。

店内は長年通う常連客や「ばんぢろ」に引き寄せられた旅行客で賑わい、皆がそれぞれ自由にくつろぎの時間を過ごしている。
「何か考えたいときや迷ったとき、マスターのコーヒーを飲めば落ち着く」と常連客の方は語る。

賑わっていながらも、不思議と静かで落ちつけて、まるで自分の家のように絶妙に居心地が良い。
昔ながらのレトロな雰囲気と異国情緒が重なり合う店内。
コーヒー同様、様々なものが大切に受け継がれている。

家具もそのひとつ。
イスに貼られているシールには、アダルの前進「イスヤ商会」の文字。
40年ほど前から「ばんぢろ」の一員としてお客様を出迎えてきた。

変わらないもの、大切なものに出会える場所、いつも待っていてくれる場所。
人生に必要な一杯がここにはある。


コーヒーの店 ばんぢろ
住所/ 福岡県久留米市六ツ門町22-34
電話/0954-32-0