急激な変化によって訪れた飲食業界の困難な状況下でも、変わらぬ美味しさを届けながら新たな挑戦を行い、愛され続ける場所。「うまかもん」の宝庫・福岡で、地域になくてはならない「ソウルフード」として親しまれてきたお店のリアルな現在地を、トップインタビューを通してご紹介します。

根底には「幸せを一杯に。」という理念。資さんファンの声に支えられ育てられ、地域に必要不可欠な安心できる存在へ。

福岡県北九州のソウルフードとまで言われ、愛され続ける老舗うどんチェーン「資さんうどん」。メインのうどんはもちろん、おでん・丼物・ぼた餅など100種類以上のメニューが揃い、資さんファンが続々と訪れる。

同店ならではの温かでアットホームな空気感の中、一口食べれば「そうそう、この味」と思わず笑顔がこぼれる。時代が変わっても、困難に直面しても、常に根底にあるのは「幸せを一杯に。」という経営理念。その創業の精神が、接客にも空間づくりにも反映されている。来店するたび、「実家に帰ってきたみたい」「もう第2の食卓」と話すリピーターも多い。時代の変化に柔軟に対応しながら、“この町になくてはならない日常的な存在”としてあり続け、「最高の一杯」を届けていく。


株式会社資さん
代表取締役社長 佐藤 崇史


経営理念を体現できる従業員の存在が強み。創業の精神を軸に主体的に行動し、「資さんうどん」を守りつなぐ。

北九州のお客様に育てられソウルフードとして定着

1976年の創業から、40年以上にわたって地域のお客様に支えられてきました。柔らかすぎず硬すぎない、博多うどんと讃岐うどんの中間のような独特の麺のうどんがメインですが、おでん・丼物・ぼた餅など100種類以上のメニューが揃っているところも特徴です。

北九州のおでん文化を大切にした看板商品。特製出汁の旨味と風味がたまらない。おでんをつまみながら、うどんを待つのも楽しい時間。
年間450万個を売り上げる「資さんうどん」の名物。塩気のあるほどよい甘さの餡子と、店舗で炊き上げたモチモチなもち米の絶妙なバランスで大人気。

ありがたいことにソウルフードと言っていただけるようになり、北九州のお客様に支えられ、育てられてきました。私自身が初めて来店したときもそうだったのですが、新規のお客様のご来店理由の多くは口コミです。資さんファンの方々が紹介してくださったり、連れてきてくださったりで、本当にありがたく感じています。

半年以上かけて創業精神を言語化

私が2018年の春に着任したとき、すでに創業者の大西章資が亡くなって3年弱が経っていました。大西がいた時代は大西自身が経営理念を象徴する存在でしたが、その創業の精神が年月の経過や出店エリアの拡大とともに薄まってしまうのではないかという懸念があり、大西と一緒に働いていた従業員がいるうちに、創業時から大切にしていることを反映し、これからの未来の羅針盤となる経営理念を策定しようと決めました。そのため、トップダウンで決めて浸透させるのではなく、皆で膝を突き合わせて本音で語り合う中で見つけ出していくことが必要でした。資さんの本質とは何か、これまで私たちが本当に大切にしてきたこと、これから目指していくべきことなどについて、様々なメンバーと何度も議論を重ね、半年以上かけて「幸せを一杯に。」という経営理念にたどり着きました。また、同時にそこから導き出した「目指すこと」と「3つの約束」も定め、より具体的な行動の道標としています。

こうして、私たちが守っていくべき変わらない精神を言語化できました。今後、出店エリアが広がっても、大西を知らない従業員が増えても、この理念を軸に行動していれば、「資さんうどん」であり続けられると考えています。

店内にもポスターを掲示し、全員で経営理念を体現

経営理念の策定後は、全従業員に浸透するよう取り組んでいます。休憩室だけでなく店内にもポスターを掲示し、理念を体現していく重要性を従業員により強く感じてもらいながら働けるような環境づくりを心がけ、同時にお客様にも私たちの姿勢をお伝えしています。
経営理念の真の体現のためには、まだまだ担当するメンバー1人ひとりがやるべきことも多いですが、接客・サービス・空間づくり・商品開発など、その全てにおいて“資さん愛”を発揮し、経営理念の体現に取り組んでいます。全員が同じ軸を持ち、主体的に考えて真摯に行動していく。そういった従業員の存在が、「資さんうどん」であり続けられる大きな理由だと感じています。

お客様の声が、最高の一杯と成長の原動力。通販・テイクアウト・宅配も強化しながら、全国各地の地域一番店を目指していきたい。

帰省できないというSNSの声から通販始動

お客様の声を大切にし、同時に素早く反応して応えていくことが大切です。2020年のGW前、政府による帰省自粛のメッセージが出されたとき、SNS上に「帰省できないから資さんうどんが食べられない」という悲しみの声がたくさん投稿されました。そこですぐに、ご自宅でも「資さんうどん」の味を楽しんでいただけるよう、休止していた通販の再始動に向けて動き出したんです。

部署横断のプロジェクトメンバーを中心に1ヵ月くらいで立ち上げて、どうにかGWには間に合わせられました。帰省できないので購入するというお客様だけでなく、県外のご家族に送るというお客様も多くいらっしゃいました。

お客様に喜んで頂くことに全力だった創業者の想いを継ぐように

創業者の大西は、”お客様に喜んで頂けるか”を第一に考え、従業員にも同じ気持ちを持ち働くことを望んでいました。現在の基盤となっている味・量・メニュー・店内の雰囲気なども、お客様の声を大切にして構築していったものです。
私たちがSNSを貴重な場として積極的に活用しているのも、そういった創業者の想いからつながっています。店頭アンケートはもちろん、本部に届くお電話、メールや手紙に関しても、毎日必ず皆で確認・把握し、お客様の声に迅速にお応えできるように取り組んでいます。

児童養護施設やこども食堂へも、できたての美味しさを届けるキッチンカー。地域の子どもたちへの食を通じた支援にも力を注ぐ。

「家のような安心感」でお客様の日常に寄り添う

ご来店いただくお客様からは、「なんだか実家に帰ってきたみたい」といったお声をいただくことが多いです。馴染みの味や空間、そして馴染みの従業員が、そういう「家のような安心感」を生み出している理由だと思います。
朝定食を毎日食べに来てくださるお客様も多くいらっしゃいますし、「私の血液は、資さんの出汁でできています」と言っていただけることもあります(笑)。お客様の日常的な存在になれるということは、本当に嬉しくありがたいことです。

頑丈・快適・飽きない。家具は居心地に直結。

家のように心地よい空間づくりのためには、家具選びも重要です。お店のテイストに合っていることはもちろん、飽きのこないベーシックなデザインで、座り心地も快適。そして何といっても頑丈!アダルさんの家具は全て満たしているので、とても気に入っていて、ずっと使い続けたいです。

新ツールと働きやすさ。バランスを大事に一歩ずつ。

お客様満足度の向上のため、通販サイトの構築やテイクアウト・宅配サービスの強化、DX化など積極的に進めています。ただ、それはあくまでもツールであり、そのツールが従業員の負担になっては意味がなく、結果、お客様満足度も高められません。
お客様からはもちろん、従業員からも愛されるお店であることが重要だと考えています。新たなツールと働きやすさのバランスを大事に、一歩ずつ前進中ですね。

店内にはタッチパネルやセミセルフレジを導入。お客様の利便性、満足度向上を目指し進化を続けていく。

「資さんがあってよかった」を目指し、全店舗を各地域の一番店へ。

今後も「資さんうどん」全店舗がそれぞれの地域での一番店になれるよう努力を重ねていきます。出店する地域の皆様に、「資さんがあってよかった」と思っていただけることが理想です。全従業員が前を向き、「最高の一杯」をお届けし続けていきます。


資さんうどん 博多千代店
住所/福岡県福岡市博多区千代2丁目1-24
電話/092-260-1190