コラム
COLUMN家具端材から生まれた干支オブジェ「fukune」プロジェクト

2023年より、家具製作の過程で排出される端材を活用した干支オブジェシリーズ「fukune(ふくね)」を開発・販売しています。このプロジェクトは、サステナビリティを重視したものづくりの一環として、毎年1体ずつ干支をモチーフにしたオブジェを制作し、12年をかけて全ての干支をコンプリートすることを目指しています。
「fukuneプロジェクト」の背景と目的
家具の製作過程で発生する端材は、年間約210立米、40フィートコンテナ3台分にも及びます。これらの端材を無駄にすることなく、再利用する方法の1つとして「fukuneプロジェクト」をスタートさせました。
「fukune」という名前には、二つの意味が込められています。一つは「福音(ふくいん)」の音読みで、喜びを知らせるという意味。もう一つは、家具を作るために使った端材がアップサイクルされ、再びインテリアに生まれ変わったことを表現するために、「fukune」の名前の最後の文字「e」の次の文字である「f」を頭文字にすることで、”循環”を表現しています。
端材を活用した干支オブジェの製作
「fukuneプロジェクト」の第一弾として、2023年には干支の卯(うさぎ)をモチーフにしたオブジェが制作されました。続いて、2024年には辰(たつ)、2025年には巳(へび)をモチーフにしたオブジェを発表し、いずれも個数限定で販売してまいりました。

端材を接ぎ合わせて作った角材から形を削り出した様子
これらのオブジェは、アダルが所有する「5軸CNC加工機器」を使用して製作されています。この機器により、天然木の端材をコンピュータ制御で削り出すことができ、複雑な形状でも高精度で再現可能です。例えば、「fukune-辰-」は、端材から約20分で辰の形状に仕上がります。これは、手彫りで製作した場合の約30分の1の時間で完成するスピードです。
また、これらのオブジェは、どんな空間にも馴染むよう、シンプルモダンなデザインが施されています。“思わず撫でたくなるような”柔らかなフォルムが特徴で、天然木の温かみを感じられる仕上がりとなっています。
製作動画公開中
「fukune」オブジェを5軸CNC加工機で切削する様子をご覧ください。
廃棄物の低減を目指して
当社では、端材の再利用にとどまらず、廃棄物の低減を目指した取り組みを積極的に行っています。例えば、比較的大きな木端材は、工場見学時のノベルティとしてドアストッパーなどにアップサイクルしています。また、細かな端材は粉砕して自社農場で栽培している野菜の肥料の一部として活用したり、近隣の牧場へ提供したりするなど、多岐にわたる活用を行っています。
「fukuneプロジェクト」は、こうした取り組みの一環として位置付けられています。毎年1体ずつ干支をテーマにしたオブジェを制作することで、サステナビリティを意識したものづくりの重要性を広く伝えるとともに、端材の新たな価値を創造しています。

家具端材をアップサイクルしたドアストッパー

さらに、2020年に導入した5軸CNC加工機器を活用することで、従来の手作業では難しい複雑なデザインや高精度な加工が可能となり、ものづくりの幅が広がりました。業界においては、この加工機器でどのようなデザインが製作できるのかイメージが湧きづらいという課題がありましたが、「fukuneプロジェクト」を通じて、3次元加工を用いたものづくりの可能性も発信してまいります。