40年来変わらず、居心地のいい場所

2〜3時間滞在は当たり前。 なかには半日過ごす強者もいる。 福岡の繁華街・天神で40年以上愛されている喫茶店、 『風街』の話である。

老いも若きも、 男も女も、 客層は実に幅広い。 そして彼らは口を揃えて言う。 「ここは、 なんか落ち着くっちゃんねー」。 取材時に居合わせた女性の常連さんは、 「居心地が良すぎて、 たまーにカウンターに突っ伏して寝ちゃってます」。



そしてなにを隠そう、 筆者も『風街』に居座る客のひとり。 ランチに、 打合せに、 友だちとのおしゃべりに、 時には仕事を抜けだし息抜きに、 なにかにつけて訪れ、 ふと気付けば何時間も過ごしてしまっているのだ。 そんな話をオーナーの森さんにすると、「嬉しいなぁ。 うちが目指しているのは、 居心地の良い店 だから」と、 にっこり。

開業は昭和51年。 森さんが23歳のころ、 北海道を旅した際に出会った喫茶店に心を動かされ、 「僕もこんなお店を!」と一念発起。 その宣言通り、3年後に地元・福岡で『風街』をオープンさせたという。 現在の店はビルの取り壊しにつき、 平成8年に移転したものだが、 森さんこだわりの赤煉瓦仕立ての内装は初代を踏襲している。 「アダルさんとは移転後からのおつきあいだね。 テーブルも椅子も、 カウンター席のスツールもアダルさんだよ。 張り替えをしながら使ってるんだけど、 どれも20年ものだ。居心地の良い 空間づくりになくてはならない存在だね」と、オーナー。


そう、 『風街』を愛する者にとっては、 ちょっとガタッとくるテーブルも、 ADALシールが剥がれかけているチェアーも、 まるごと愛おしい『風街』なのだ。

そして、もうひとつ。空間や家具とともに、『風街』の心地よい空気感づくりを担っているのが、 オーナーが「10年はザラ。なかには勤続20年以上という人もいるよ」というスタッフだ。放っとかれているようで、 実はしっかり気配りされている。 接客も含め、 これぞ、 昭和の喫茶店! いつまでもあり続けて欲しい一軒である。もちろん、 そこにはアダルの家具が側にいる。


風街
住所/福岡市中央区天神3-3-7 応順ビル 1・2F
092-712-3093
営業時間/[月~土]8:00ー23:00[日・祝] 9:00ー23:00