コロナ禍で飲食業界全体が困難に直面している今、以前に掲載させていただいた愛され続ける老舗店の皆様に、改めてお話を伺いました。目まぐるしい変化との向き合い方、新たな取り組み、変わらず大切にしていること。追加インタビュー分も含めた再編集版で、どんな時代も愛される名店の現在地をお届けします。

お客様が残した笑顔とメッセージが宝物。震災でもコロナ禍でも温もりの記憶を刻む。

オーナー特製のフランス料理で、おもてなし。熊本県阿蘇の森の中のシャンブル・ドット。

シャンブル・ドット。それは、フランスの郊外や地方にあり、大きな一軒家の中で家庭的なおもてなしをする宿泊施設のこと。日本ではまだあまり馴染みがないが、熊本県阿蘇の森の中、30年以上も前に「アルムの森」は生まれた。天然温泉の露天風呂やバーカウンターなど、くつろぎのための要素が充実。その中でも特に最大の魅力が、名物「牛肉の煮込み」や人気メニュー「サーモンのガトー仕立 ソースブールブラン」をはじめ、オーナー特製のフランス料理だ。ダイニングに並ぶテーブルとイスも開業時から親しまれていて、三度の大きなリニューアルを経てもなお愛用されてきた。大自然に抱かれた森の中、時間を忘れるシャンブル・ドット。温もりの記憶が刻まれていく。

熊本地震のときと同じく、信じること。メッセージと温かさが積み重なっていく。

昨今の社会の目まぐるしい変化にあたり、追加インタビューを実施。
「2016年の熊本地震と同じく、どんな困難な状況でも必ず乗り越えられると信じています。その気持ちを持ち続けることを大切にしています」と語るオーナーご夫婦。

熊本地震で被災した際も、お客様の笑顔を思い出し、営業再開を諦めなかった。約一ヵ月後に再開すると、多くの人が駆けつけた。
『はたらく家具 第5号』掲載時と同じく、現在も宿泊客からの手紙が宝物。部屋に残された嬉しいメッセージに微笑む。そして、そういった長年にわたる心の交流が、「アルムの森」の温かな空気感となって醸し出され、たくさんの人々にとって何度も訪れたい場所になっていくのだろう。

続けていてよかったと思える瞬間が何度も。これからも変わらずお出迎えできるように。

最後に、これからに向けてのメッセージをいただいた。
「一名で宿泊されていたお客様がご結婚後にファミリーでお越しになり、そしてまたそのお子様がご結婚なさって来てくださる・・・というような、ありがたいことが何度もあり、その度に続けていてよかったと思います。これから特に何か斬新なことを始めるといった予定もありませんが、少しでも長く続けられるよう、お客様をお迎えできるよう励んでまいります」

アルムの森
住所/熊本県阿蘇市乙姫2083-115
電話/0967-32-4500